第1回で、「誤りとは?」、「誤り訂正とは?」を考察。
第2回で、「1個の量子を数十~数百もの量子で監視するとはどういうことなのか?」を調査。
なんかいろいろ、力技の世界なんだなぁ、と理解したわけです。
今回は、それらをふまえ、各方式の量子チップ開発、今後の見通し等を整理しておこうと思います。
各方式の状況
まずは、量子コンピューター実現に向けた各方式の開発状況をおさらい。
1.超電導方式(IBM):【巨大化との戦い】
実績はトップクラスだけど、量子を増やすと「超巨大な冷蔵庫」が必要になる模様。
「100万の量子とそれを見守る各100の監視役量子」というシステムだと、体育館みたいな大きさになる。もの凄い配線も整理しなければならない。じゃあ1個1個を小さくすれば良いんじゃね?、けどそうすると同期はどうとる?、エラーが増えるぞ、、、
等々の壁と、おそらく格闘中。
量産的には、100台の冷蔵庫(1万の量子で1台)で1システム。う~ん、利用者は大企業優先の予約制ですね。
2.イオントラップ方式(IonQ): 【超・精密機械】
原子にレーザーを当てる、なんかカッコいい方法だけど、数を増やすと半導体の絶対王者・ASMLの露光装置並みに制御が超難しいのがネック。
エラー率が他の方式に比べ圧倒的に低いので、制御さえできれば良さそうだが、おそらく超絶高度なレーザー装置と制御が必要なのでお金かかるだろうなぁ、量産には向かないだろうなぁ、やっぱり富裕層向けの予約制になりそう。
3.シリコン方式(Intel):【物量・力技】
CPUチップのように、1枚のシリコンに何億個もの量子軍団をギチギチに詰め込んで数で殴るスタイル。
「量産」というテーマでは最有力だが、量子をいかに安定させるかが鍵。 ※ここはあとで掘り下げます。
4.光方式(PsiQuantum):【すり抜け魔との戦い】
超電導のような「巨大な冷凍庫」が不要で、常温で動かせるのが最大のメリットだが、光は早すぎる。
さらに光が途中で消えたり、検出器をすり抜けたりするという、扱いずらさも克服しなければならない。
光通信技術の流用が可能なので、速度差とエラー(誤り訂正と光の減衰、両方)を克服できれば、常温でOKというのは魅力的(正確には、周辺のセンサーは冷やす必要があるようなので、スマホにすぐ量子チップが入るわけではない)。
量産できそうな仕組みだけれど、課題も複数あるね。
5.トポロジカル方式(Microsoft):【そもそも壊れないけれど】
理論上、「そもそもエラーがほとんど起きない」という夢の量子ビットを作る方法。
けれど、それを実現するための特殊な粒子がまだない?(世界中の科学者が「見つけた!」「いや、気のせいだった」を繰り返しているレベル)。理論的には最強だが実際にはまだこれから。
みんな頑張ってる。凄い。全ての開発者を愛さずにはいられない。
けどね、僕は推しているのは、一貫して「シリコン方式(Intel)」。
なぜシリコン方式(Intel)を推すのか
僕は最初からこの方式のIntelを推している。
今時点では、一番量産に向いているからだ。
量子AIの恩恵は、みんなに届かなければならない。
少数(大企業)優先は独占を生み、格差と絶望になる。圧倒的なスピードでそうなる。
僕は、T型フォードが世に広まった時のように、初めてT型フォードでドライブに出た青年が「すげぇなこれ!、楽しい!」と思った時のように、量子AIが実現した先の未来は明るくなってほしい。
だから、量子AIの時代がもうすぐ来ることが避けられないのならば、Intelのシリコン量子チップの早期量産を願っているのだ。
Intelのシリコン量子チップ、現状とこれから
この会社のおもしろいところは、量子チップ製造に関して新しい技術がきちんと進展していて、そこに既存技術も重ね合わせてアプローチできることだと思う。
1.量子を操る技術
・Cryo-CMOS:極低温で動く制御回路。業界からは「半導体の巨人が本気でインフラを作るとこうなるのか」と絶賛されている模様。 冷蔵庫の中の配線を劇的にスッキリさせる。
・Exchange-only:物理量子を「3つで1セット」にしてノイズをシャットアウトする賢い仕様。「力技ではなく構造でノイズを消す」というスマートなアプローチで業界人も唸った技術みたい。 回路が圧倒的にシンプルになる。
2.既存技術
以下はインテルが「インテル、終わってる」と揶揄されても止めず、何千億円も投じて磨き上げた経験・財産。これをそのまま量子チップの製造に利用できる。
| 技術名 | 概要 | 量産へのメリット |
| 18Aプロセス | 原子レベルの超微細印刷 | 不良品(個体差)をなくし、1億個のマスを均一に作る。 |
| 裏面電源 (PowerVia) | 電源線をチップの「裏」へ | 表面をスッキリさせ、量子への電気的ノイズを極限まで抑える。 |
| EMIB / EMIB-T | 最強のチップ合体技術 | チップ同士を、あたかも1枚であるかのように高速でドッキング。 |
| デジタルツイン | 仮想空間のコピー工場 | AIで試作を何万回もシミュレートし、設計と製造のタイムロスをゼロにして歩留まりを爆速で上げる。 |
いろいろあるけれど、、、
100万の論理量子×それら1個あたり約100個の監視量子で、1億個強の物理量子を持つチップの作成って、現在のCPU(たとえば Intel Core Ultra ‘Panther Lake’など)のトランジスタの数(200~300億個)に比べれば、全然余裕の数じゃない?
くらいに思っておきたい。
ロードマップ
Intelは派手な発表がないので、今どうなってるのかわかりずらい(たぶんそういう戦略なのだと思う)。
けれど一応以下のような計画は公表されているようだ。
・2027〜2028年:数千〜数万の物理ビット統合、最初の「論理量子ビット(エラー訂正)」の実現
・2030年〜:1億個(数百万の論理量子ビット)規模の商用量子コンピュータの実現
この計画を逆算すると、利用する側の企業にとっては、
2030年に、「お、じゃあ我が社も、量子コンピューター向けにデータ整理を始めるか」では遅い。負け組側が確定する。
2028年に、「では、用意した我が社の素材データで、量子シミュレーションのPOCをしよう」じゃないといけない。
つまり、2026年の現時点で量子AIの5年後の実現を確信した企業は、自社のデータ整備が静かに、激しく始まっているのだろうなぁ、と思う。
どうなるか、わからないけれど
「誤り訂正ってなに?」から始まった量子コンピューターについての今回の考察、各種方式の現状分析(僕なりの)から、Intelのシリコン量子方式の深堀り、量子AIの未来まで、ちょっと語り過ぎてしまった気がする。
それに各方式・各社、みんな頑張ってるし、どこが最初に実用化されるか、結局のところ未来なんて、わかるはずがない。
けれど、
蒸気機関車がイギリスを変えたように。
T型フォードがアメリカを変えたように。
量子AIが世界を変えるなら、その未来は良い方向に向かってほしい。
僕は最近、割と真面目に、そう思っている。