没になったAI活用提案書(第1回)概要説明編

「う~ん、欲しいのはねぇ、こういう良くある普通のAI提案書じゃなくてね。。。」

ということで今年(2026年)2月、実際の案件で提案したけれど採用されなかった、僕が作成したAI活用提案書の一部をここに公開します。

 

第1回は、AIを使ってどんなことをしようとしていたのか、実際の提案書から内容を抜粋して紹介。

第2回は、この考え方、もしかして Anthropic Mythos に近い?、と思ったことについて、本当にそうなのか、酷い勘違いなのかを考察。

という風に進めます。

 

(補足1)
この提案書の著作権は、「採用されなかった」、「作成時点での僕は個人事業主である」、「作成対価を受け取っていない」ので、僕に帰属します。そしてこれを見た方、読み捨てようが参考にしようが、僕の生活に影響がない限り自由です。

(補足2)
Anthropic、Mythosとは、AIが自律的に連携・循環してタスクを遂行するという同社の概念、「エージェント型システム(エージェント・ループ)」の仕組みをベースに開発されて2026年4月に発表された、サイバーセキュリティ強化AI。
 

始めに

冒頭にも書いた通り、このAI活用提案書は「採用されなかった」わけです。でも当時はそれほど残念ではなかった。

むしろ「あぁ、だいたいこれくらいのことは、みんな考えてるだなぁ」ということがわかって、僕の発想はそこに追いつけているんだなと理解、わりと満足したのである。

だからここに抜粋した提案内容は「お蔵入り」で、「いずれ誰かが類似のシステムを作るんだろうなぁ、ちょっと羨ましいなぁ、けどまぁいいか」くらいに思っていたのだ。数週間前まで。

この投稿に至るきっかけは、最近、AnthropicMythosが話題になっていることだった。

Anthropic、Dario Amodeiへ応援投稿をしたことで、(実は生成AIにはそれほど関心がないのだが)とりあえずMythosとは何かぐらいは知っておこうかな、と思ったのだ。

そして確認してみると、

「AIをぐるぐる回しながら仕事を進めるこのやり方って、2月の僕の提案書のスタイルと、そんなに変わらないよね?」

「なんでこんなに盛り上がっているのだろう?」

「Anthropicはセキュリティについてなのでジャンルは違うけれど、基本は同じだよね?、それほど凄いことなのだろうか?」

上記のような疑問が湧いてきたのだ。

なので改めて、ここに提案書を紹介しながら、もう一度、内容を再評価してみようと思う。

 

現行業務システム→新しい仕組みのシステムへの移行でのAI活用

この提案は、現在の業務システムが古くなり、保守性・拡張性等の課題が顕著になってきたことが起点となっている。

将来を考えた時に、「いや、まだまだ使い続ける」、「そのままクラウドに移行する」、「全部作り直す」等、様々な検討が行われる。

そして僕の提案は、「業務的な観点は基本的に変更せず、システムアーキテクチャ/プログラミングを新しい仕組みに移行する」モダナイゼーション(IT Modernization)での、AI活用案となっている。

 

概要

旧システムは、IBM業務コンピューターシステム上で動く独自システム。

移行するシステムは、AWS上でAPServer、DBServerを構成し、プログラムを全てJava化したシステム。

すでに(POCを含め)何度か、類似の業務システムの移行作業を行ってきている。

過去のやりとり(QA)、課題・障害の記録(Jira)、移行システム向けの設計書(Excel)を有効活用する。

その仕組みの構築に以下のような工夫を行う。

・EXCELベースの移行設計書のMackDown化、Git管理。
・過去の実績(旧言語から新言語への移行)の分析、Git管理。
・過去のQA、課題・障害Jiraの分析。
・VeotorDB(統合ナレッジ)への登録。
・VectorDB、RAG、LLM推論による設計書案、修正案等の生成
・作業循環によるナレッジの自動成長

概要図 

(概要図補足)
 ①ドキュメント・ソース・Jiraからナレッジを集約
 ②VectorDBを介してAIが推論
 ③それを人間がUIやGit/Jiraでレビューしてまたナレッジが育つ
という循環構造になっています。

各エージェント説明

1.ドキュメント管理エージェント(Excel → Markdown → Git)


(1)役割
 Excel 設計書・一覧表を Markdown へ変換し、RAG で扱いやすい形に整える。

(2)主な機能
 ・Excel → Markdown 自動変換(Python による加工を含む)を行う
 ・RAG 用ナレッジとして Markdown を提供する
 ・Git によるバージョン管理と単一ソース化を行う(知識の原本がここにある)

(3)入出力
 入力:
  Excel 設計書、一覧表
 出力:
  メタデータ付き Markdown、Git コミット

(4)要考慮事項
 ・Markdown 変換ルールの厳密化(テンプレート化)
 ・Python、Pandasの活用
 ・メタデータ設計(機能ID、要件ID、TODO種別など)

 

2.ソース解析エージェント(旧言語 / Java → Git)

(1)役割
 旧言語・Java ソースの構造を理解し、差分や 要件/TODO/課題対応をナレッジとして扱える形に整理する。

(2)主な機能
 ・旧言語 / Java ソースの Git 管理を行う
 ・差分解析、要件/TODO/課題の抽出を行う
 ・RAG 用にソース断片を構造化する
 ・Git イベントをワークフロー制御エージェントへ通知する

(3)入出力
 入力:
  旧言語ソース、Java ソース(自動変換前後)
 出力:
  差分情報、要件/TODO/課題一覧、メタ情報付きソース断片

(4)要考慮事項
 ・旧言語ソースの構造化(メタ情報付与)が必須
 ・構造化が不十分だと RAG 精度が低下する

 

3.業務ナレッジ・ワークフローエージェント(Jira / n8n / JavaScript)

(1)役割
Jira の QA・課題・障害をナレッジとして整理し、Git や AI と連携するハブとなる。

(2)主な機能
・Jira の QA・課題・障害の管理と構造化を行う
・n8n によるワークフロー自動化を行う
・JavaScript による補助処理(タグ付け・整形など)を行う
・Git の差分イベントを受け取り、AI ナレッジ側へ連携する

(3)入出力
入力:
 Jira チケット、Git イベント
出力:
 構造化された QA/課題情報、RAG 用ドキュメント

(4)要考慮事項
・Jira の粒度がバラバラだと RAG 品質が低下する
・タグ・カテゴリの標準化が必要

 

4.ナレッジ統合エージェント(Markdown / ソース差分 / Jira → VectorDB)

(1)役割
すべてのナレッジ(設計書・Jira・ソースコード)を Markdown に正規化し、Git 差分を解析して意味単位に分解し、VectorDB に統合する。

(2)主な機能
・Markdown 正規化(設計書・Jira・ソース)
・Git 差分解析
・チャンク化(意味単位への分割)、
・メメタデータ付与(出典・更新日時・タグ)
・VectorDB への登録・インデックス生成

(3)入出力
入力:
 Markdown 化されたナレッジ、Git 差分
出力:
 VectorDB に登録された統合ナレッジ、RAG が参照可能なチャンクデータ、メタデータ付きナレッジオブジェクト

(4)要考慮事項
・Markdown の統一ルール
・チャンク粒度の最適化、メタデータ設計
・Jira・Markdown・ソースの粒度差を吸収する正規化が必要
・VectorDB のスキーマ設計

 

5.AIナレッジ・推論エージェント(RAG / VectorDB / LLM)

(1)役割
・ナレッジ統合エージェントが VectorDB に蓄積した知識を検索し、LLM による推論・生成を行う中核エージェント。
・“統合されたナレッジを使って、設計・要件/TODO/課題対応・テスト観点を生成する” 役割を担う。

(2)主な機能
・VectorDB からの関連チャンクを検索する
・過去の設計書・要件/TODO/課題対応例・課題・障害・ソース差分を横断的に参照する

・LLM により以下を生成する
 個別設計書ドラフト
 要件/TODO/課題、各対応案
 修正コード例
 テスト観点
 単体テスト仕様書案

・ユーザーの質問に対して、最適なナレッジを組み合わせて回答を生成する
・必要に応じて、UI/UXエージェントへ返却する形式に整形する

(3)入出力
入力:
 ユーザーの質問・要求
 VectorDB(統合ナレッジ)
 Git / Jira からのイベントを経由したナレッジ更新
出力:
 個別設計書案
 要件/TODO/課題、対応案
 修正コード例
 テスト仕様書案
 AI回答(UI/UXエージェントへ返却)

(4)要考慮事項
・RAG(VectorDB)の検索精度はチャンク設計・メタデータ設計に依存する
・LLM の自動化範囲を明確にし、最終判断は人間が行う運用が必要
(レビュープロセスで必ず人間がチェックする)
・推論結果の品質を継続的にフィードバックし、ナレッジ統合エージェントへ還元する仕組みが重要
・過剰な自動化は誤回答リスクを増やすため、適切なガードレール設計が必要

 

6.UI/UXエージェント

(1)役割
・ユーザーと各エージェントの間に立ち、対話・操作・結果提示を行うフロントエージェント。
・「エージェント群の知能を、ユーザーが自然に使える形で提供する」 役割を担う。

(2)主な機能
・Web UIによる対話・操作を提供する
・AIナレッジ・推論エージェントの回答を表示する(設計書案、各種対応案、コード例、テスト観点など)
・ドキュメント管理エージェント・ソース解析エージェントへの操作トリガーを提供する
例:
「このExcelをMarkdown化して」
「このプログラムの変換設計書を生成して」
「このプログラムの手動変換部分のコードを生成して」
「このプログラムのテスト仕様書を生成して」
「この課題の影響調査をサポートして」
等々

・ユーザーの操作を、適切なエージェントへルーティングするハブとして機能
・結果を業務フローに沿った形で提示(Git連携、Jira連携など)

(3)入出力
入力:
 ユーザーの質問・操作
 業務フロー上のアクション(例:Jiraチケットからの起動)
出力:
 AI の回答
 変換設計書案
 各種対応案
 修正コード例
 テスト観点・テスト仕様書案
 各エージェントへの操作指示

(4)要考慮事項
・ユーザーがエージェント構造を意識しなくて済む UI 設計
・「どのエージェントが動いているか」を隠蔽し、自然な操作を提供
・業務フローに自然に溶け込む導線
・IDE 連携(VSCode など)
・Jira 連携
・Git 連携
・出力の品質をユーザーが評価し、フィードバックをナレッジ統合エージェントへ返す仕組み
・操作ログをナレッジ循環に活かす設計(どの質問が多いか、どのTODOが頻出かなど)

 

7.全体統合エージェント

(1)役割
・各エージェント(1~6)の成果物を集約する。
・矛盾や重複を解消、ドキュメント全体の構造を整え、VectorDB に登録できる形に最終加工する。

(2)主な機能
・各エージェントからアウトプット(要件定義/課題抽出/対策立案/チャンク生成など)を受け取る
・品質保証とガードレール(チェック、調整、レビュー)
・メタデータ・チャンク・ドキュメントを一元化
・最終出力(Markdown、JSON、VectorDB 登録前データ等)を生成

(3)入出力
入力:
 各エージェントの成果物
 各ドキュメントの構造・ルール
出力:
 最終ドキュメント
 最終チャンク群
 メタデータ付きの構造化データ

(4)要考慮事項
・用語・表現・粒度の統一、メタデータの整合性、チャンクの粒度の標準化
・同じ入力なら同じ構造の出力が得られるように新しいエージェントが増えても統合できる構造
・検索精度を高める構造化

 

まとめ、次回

ちょっと長くなりました。

概要とエージェント説明だけでは全容を捉えずらいかもしれない。雰囲気を味わってください。

ある程度以上は想像してください。

 

ここのブロブの主題である「量子AI」関する内容とはちょっと違うので、最初は「黄昏ノート」カテゴリ側に投稿しようかと思っていた。

けれど量子コンピューター、量子AIが実際に活用されるようになったとしても、人との関わり、前処理、古典AIとの連携等が必要になるはずで、その組み立ての初歩としては、まぁありかな?、ということで「量子の観測」カテゴリに載せています。 

次回はAnthropic Mythosとの対比、考察を行う予定。